多発性骨髄腫(MM : multiple myeloma)

多発性骨髄腫(MM : multiple myeloma)

一言で言うと...

骨の中の成分が腫瘍化*1変な蛋白が血中にたくさん出る病気

医療用語を用いて一言で言うと...

骨髄で形質細胞腫瘍化し、これにより生成されるM蛋白が血中に放出される病気

病態

骨髄にある形質細胞*2が腫瘍化し、その腫瘍化した形質細胞からM(モノ)蛋白*3が産生され血中に放出される。

M蛋白が血液により全身に運ばれてしまうことで、体の様々な場所、臓器で悪さをすることにより、様々な症状を(きた)す。

M蛋白が何をするか

  • 骨髄内の形質細胞が腫瘍化することで、異常増殖する形質細胞に栄養を取られ、骨髄の正常な働きが妨げられ骨髄機能が低下する→貧血*4
  • 骨髄に異常を来すことで骨が溶けてしまう(骨融解)。これにより、頭のレントゲン写真で「骨の打ち抜き像」と言われる、頭蓋骨にポコポコ穴の空いたような写真になる。また、骨が溶けることで骨の成分であるCaが血中に溶け出し、血中のCa濃度が高くなることで(高Ca血症)、疲れやすくなったり(()疲労)、だるくなったり((けん)怠感)、吐き気を催したりする。
  • M蛋白が血中にたくさん出ること(M蛋白血症)で、腎機能が低下する。腎臓は血液を濾過することで尿にする臓器であり、M蛋白により血液の粘稠度が上がることで腎臓がダメージを受けてしまう。→腎機能低下

臨床像

50歳以上の方に好発で、主に骨痛貧血症状が主訴*5の方が多い。

検査

  • 貧血症状:Hb↓
  • 骨融解:骨痛、易疲労感、倦怠感、吐き気、骨打ち抜き像
  • M蛋白血症:M蛋白↑、総蛋白↑、Alb↓、正常γ-グロブリン(IgG,IgAなど)↓、電気泳動のM-peak、M-bow
  • 腎機能低下:BUN,Cre↑*6、β₂MG↑

治療

  • 化学療法:プロテアソーム阻害薬*7としてボルテゾミブサリドマイド*8の誘導体であるレナリドミ*9による導入療法がある。また、再発、難治例に対してはメルファラン*10を用いる。
  • 造血幹細胞移植:自家移植併用大量メルファラン療法が多い。
  • 指示療法
  • - 高Ca血症、骨痛:ビスホスホネート*11などを用いる。
  • - 貧血:エリスロポエチン*12の投与、輸血
  • - 過粘稠度症候群:血漿交換療法

*1:歯止めが効かなくなり、かつ、それが増殖しまくってる状態

*2:抗体を産生する細胞。B細胞の成れの果て。液性免疫の中心人物。

*3:IgG型、IgM型、Bence-Jones型など様々な種類がある、変な蛋白

*4:骨髄は血液を造る造血の場。つまり骨髄機能とは主に造血機能のこと。

*5:患者の訴える症状のうち、メインのもの

*6:腎機能を表す。高いほど腎機能が低下している。

*7:細胞周期に重要な役割を果たすプロテアソームという酵素を阻害し、腫瘍細胞の自滅(アポトーシス)を誘導する

*8:一部のタンパク質の分解を促す

*9:サリドマイドの副作用を軽減し、治療効果を高めた上位互換

*10:DNAにアルキル基という化合物を結合させることによってDNAの複製を阻害し、がん細胞の分裂を阻止する抗がん剤

*11:破骨細胞(骨を溶かす役割)の作用を抑える

*12:血球の材料